トウキョウ・リアル(Tokyo Real)

Tokyo Real トウキョウ・リアル 完全版 [DVD]

Tokyo Real トウキョウ・リアル 完全版 [DVD]

 著名な携帯小説の映画化らしい。原作も未読な上に、携帯小説そのものも読んだことのない素人にとっては、未知な作品だが、ある意味で期待を裏切ってくれた。

 ストーリーは、女子高生アヤがレイプされ、ドラッグ中毒になり、そして最後に付き合っている彼氏にドラッグが見つかってしまい、独りになってしまう。かなり単純化しているが、さほど差し支えは無いように思える。

 プロット自体は、良くある「リアル」を大切にする携帯小説のイメージを地で行くものだったので、先が読める展開だった。しかし、その表現の仕方が面白い。まるでカメラワークがアヤの私生活を盗撮しているかのような、剥き出しの映像。そこには映画的な手法や編集がまるで行われていないかのような錯覚に陥る。つまり、物語を見ているというよりも、むしろ盗撮映像を観ている気にさせる。
 ケンジとのデートシーンではそれが顕著である。デートに遅れたケンジに対し、アヤが「遅い〜」と詰るシーンなのだが、聴衆は6分にわたり、意味のないカップルの会話を聞かされる。その意味のなさが、聴衆をなんとも居心地の悪いものにしてしまう。なぜなら、それはおよそ一般化されうる街中に溢れている他人の会話だからである。他者の会話は当人たちにとっては意味を持っていても、その関係性の枠外に居る人々にとってはノイズに過ぎない。そのノイズが焦点化されているわけだから、われわれは何か背徳的なものを感じてしまう。
 このノイズを描いた点で、この作品は優れているのではないかと思う。物語的にリアリティがあるかないかはともかく、こういったノイズが街中に溢れていることを常に実感している点で、表現方法においてリアリティがある。記号化されたセンセーショナルな事件(ドラッグ、レイプ)が羅列される作品においては皮肉ではあるけれども。